

夏、そうめんや冷麦を盛る際に、津軽びいどろのガラスの器を使う。
出会いは数年前、都内の雑貨店だった。赤、青、黄色、オレンジ、緑……さまざまな色が閉じ込められたガラスのカップ。その宝石を散りばめたような輝きに惹かれ、思わず手に取った。津軽びいどろというガラス工芸があることを、そのときに知った。
青森県を旅行で訪れた際、直営店に足を運び、ガラスの器と、徳利とお猪口を選んだ。
色とりどりの色ガラスの粒は、組み合わせ一つで器の印象をまったく変える。青と水色と白の組み合わせなら、夏の空と海が溶け合ったような涼しさに。ピンクと白なら桜が舞い散るような春の訪れを感じさせる。緑と黄緑なら新緑のような爽やかさ、赤とオレンジなら紅葉や夕焼けのどこか儚さを帯びた表情になる。
色合いによってコロコロと表情を変える津軽びいどろの器は、私の気分もコロコロと変えてくれる。カラフルな器ならワクワクとした気持ちに。落ち着いた色合いなら安らぎを。そうして気分を変えてくれるガラスを光に当てるとキラキラと輝き、また別の表情に魅せられる。
夏になると、津軽びいどろのガラスの器を食卓に並べる。
ひんやりとした見た目の器は夏の到来を告げているようで、食卓を賑やかに、華やかにしたいときにも、暑い日に少しでも涼しい雰囲気を出したいときにも、自然と手が伸びる。
散りばめられた色ガラスは、見るたびに心を踊らせてくれる。
夜には徳利とお猪口で、冷たく冷やした日本酒をちびちびと飲む。
実際に使ってみてわかったのは、色ガラスが単に見た目を楽しませてくれるだけではないということだった。色の組み合わせによって、元気が出たり気持ちが落ち着いたり、どこか懐かしさを感じたりする。
いつしか、今日なりたい気分に似合う色をガラスの中に探すようになった。

津軽びいどろを手がける北洋硝子は、青森県青森市に拠点を構える。
1949年、漁業用の浮玉づくりから出発した北洋硝子は、「宙吹き」と呼ばれるガラスの成形技術と独自の色ガラスの調合技術を組み合わせて、色彩豊かな色ガラスによる津軽びいどろを生み出した。
その後も色ガラスの調合や研究を重ねつつ、津軽の桜や紅葉、雪景色などの四季の風景から、ねぶた祭りやりんごなど青森を代表する祭りや産物まで、青森の伝統文化を反映したガラスづくりに取り組んでいる。
北洋硝子のガラスづくりには、色ガラスの粒を重ねて表情をつける技法がある。青、緑、白、赤、黄、オレンジ。色とりどりの粒がガラスの中に散りばめられたような美しい津軽びいどろは、青森県伝統工芸品にも指定されている。

色のある器を選ぶことは、単に見た目の好みを選ぶことだけではなく、その日、食卓に求めている気分を選ぶことでもあるのだと、使ってみて気づいた。
自分自身のそのときの気分やその日なりたい気分を想像して、食卓へと反映する。そうすることで、自分の気分がさらにそちらへと向く。今日はいい日になると、そんな気力が湧いてくる。
手持ちの器を選ぶとき、用途だけでなく、その日ふと目が向く色にも少し気を留めてみる。それだけでいい。
やっぱり、夏にこの器を使うときが、一番心が踊るんだ。