

金網の茶こしを手に取り、網の目をのぞき込む。繊細な手しごとにより紡ぎ上げられた六角形の美しい編み目が連なっていることがわかります。
京金網は、京都で受け継がれてきた金網細工です。茶をこす、とうふをすくう、食材を焼く。そうした台所や食卓の道具を、銅やステンレスなどの金属線を手で編んで仕立ててきたのが、京都の京金網です。
特徴は、用途に合わせて線の太さや網目の大きさ、形を変えられること。京金網は料理店や菓子店、家庭の台所で使う道具として、さまざまな用途に応えてきました。
京金網の起源は、平安時代にさかのぼると伝えられています。金属の線材が貴重だった時代、金網は寺社の建具や香炉にかぶせる細工などに用いられる高価なものだったとされています。
家庭の道具へ広がる転換点となったのは、明治時代以降の線材の機械製造。針金が大量につくられるようになると、水切り網や茶こしなど一般家庭で使う製品も出回るようになりました。
京都には料理店や菓子店が多く、調理道具への需要が金網産業の発展を支えたのだそう。材料の供給だけでなく、道具を必要とする使い手の存在も製作が続く背景にありました。
戦後には、安価なプラスチック製品などの普及によって需要が減少しました。それでも手編みの技術を受け継ぐ作り手は、用途に応じた道具をつくり続けています。
現在も茶こしやとうふすくい、焼き網が製作されるとともに、コーヒードリッパーや盛り付け用の網など現代のライフスタイルに合う道具もつくられています。修理や別注の相談を受ける作り手もあり、既存の道具を使い続けることと、新たな用途に応えることの双方が根づいています。

形の異なるさまざまな編み目模様
京金網は模様だけでなく、網目の大きさや線の太さにも違いがあります。
茶葉をこす道具ととうふをすくう道具、食材を焼く道具とでは、必要な形や構造が異なります。手編みであれば用途に応じて線の太さや網目の大きさを変えられます。網そのものを使い道に合わせてつくることが、手しごとの特徴です。
ひとつの道具に異なる構造の網を組み合わせることもあります。たとえば京金網の茶こしには、菊の花を思わせる模様をつくる「菊出し」と、六角形の目をつくる「亀甲編み」が用いられているものがあります。その内側には、さらに細かなステンレスの網が張られています。
こういった製品では、茶葉をこす細かな内網が外側の編みと組み合わされています。外から見える模様だけでなく内側まで見ると、道具の働きを支える構造が分かります。
素材の経年変化を楽しむ
銅や真鍮で編まれた道具は、使ううちに色が変化していきます。たとえば銅製品であれば、買ったばかりの頃はピンクゴールドのような明るい輝きを放っていますが、使い込んでいくと徐々に落ち着いた飴色や黒褐色へと変化していきます。真鍮であれば、明るいゴールドから鈍いゴールドへと変化します。色の変わり方や変わる速度は、空気の状態や手の油分、使い方などによって異なります。一度きりの変化を時間とともに味わうのも、楽しみの一つです。
京金網の編み方や部品の組み合わせは製品によって異なります。ここでは主な要素を紹介します。
1.用途に合わせて線と網目を選ぶ
茶葉をこすのか、とうふをすくうのか、食材を焼くのか。使い道に応じて線の太さや網目の大きさを考える。同じ金網でも求められる働きによって構造は変わる。
2.編み台を使って網目をつくる
釘が打たれた台を使い、その釘を基準に金属線をねじり合わせながら網目をつくる。線を組み合わせることで、六角形の目が連なる亀甲編みなどの構造が生まれる。菊の花を思わせる模様をつくる菊出しも京金網に用いられる技法の一つ。
3.形と部品を組み合わせる
茶こしのように、ひとつの製品に複数の編み方を組み合わせる例もある。また、辻和金網の銅の湯豆腐杓子には、とうふなどをすくいやすいよう少しカーブがつけられている。細かな内網を備えた茶こしやステンレスの網にセラミック部品を組み合わせた焼き網など、製品によって異なる役割の部品が組み合わされる。
茶をこす道具、食卓で取り分ける道具、火にかけて使う道具。京金網は、台所や食卓などのさまざまな暮らしのシーンを支えています。