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髪の根元まで届く感覚:江戸屋のヘアブラシ
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髪の根元まで届く感覚:江戸屋のヘアブラシ

Luna Saito
|
2026-10-01
読了時間5分

初めて使ったのは入浴前。

手のひらでブラシの毛先に触れると思っていたよりも硬く、弾力がある。頭皮に当てたら痛いのではないかと心配になった。

それまではずっと、プラスチック製の安物のブラシを使っていた。特に愛着があったわけでもなく、朝は手ぐしで済ませることも多い。入浴前に髪を梳かす習慣もなかった。

ところが、江戸屋の特級黒豚毛のブラシを髪へ通すと、根元から毛先までスルスルッと進んでいく感覚がある。頭皮への刺激はあるものの痛みは感じず、むしろ心地いい。

このブラシを購入したのは、東京・日本橋大伝馬町にある江戸屋という刷毛・ブラシの専門店。地下鉄小伝馬町駅から5分ほど歩いたところにある店舗は大正時代に建てられ、国の登録有形文化財となっているそうだ。建物の中には、さまざまな刷毛やブラシが並んでいた。

店に入ると物腰柔らかなおじいさんが出迎えてくれた。彼は髪の毛をパッと見ただけで太さや量が大体分かるようで、私の髪を見て的確に特徴を言い当て、私の髪に合いそうなヘアブラシを見繕ってくれた。

店ではいくつかのブラシの硬さや梳き心地を確かめたのち、おすすめされた「ヘアーブラシ 6行植え S型 特級黒豚毛」を購入することにした。

私は髪の量が多い。柔らかいブラシでは毛先が頭皮まで入らず、髪の表面を撫でているように感じることがあった。根元からしっかり梳かすにはある程度の硬さが必要だと店頭でアドバイスを受けたが、購入した特級黒豚毛のヘアブラシを実際に髪に通してみたところ、それを実感した。

江戸時代から続く刷子づくり

江戸屋は享保3年(1718)創業の刷毛・刷子の専門店。将軍家お抱えの刷毛師として屏風やふすまなどの刷毛をつくっていた初代が開業し、以来、時代の変化とともに暮らしの道具としてのブラシから工業用のブラシまで、さまざまな刷子を手がけている。

現在では、3000種類以上の刷毛・ブラシを販売しているのだそうだ。

江戸屋には昔ながらの技法や天然素材を用い、職人が一つひとつ手作業でつくり上げる製品が多くある。指先の感覚を頼りに行う手植えや植え込みも、受け継がれてきた技の一つだ。

日本橋の店舗には、塗装用の刷毛や料理刷毛、洋服ブラシ、ヘアブラシ、歯ブラシ、ボディブラシ、掃除用ブラシやたわしなど、大小さまざまなサイズ、形、素材のブラシがずらりと並んでいる。オンラインショップでは取り扱っていない店舗ならではの商品もある。

なんといっても、素材の感触や重み、手触りをその場で感じられるのが、店舗を訪れる醍醐味だろう。最近は、海外からの来訪客も多いのだそうだ。

特級黒豚毛のブラシ

1日の終わりに気持ちを切り替える

獣毛ブラシを購入して以来、私はこのブラシを愛用している。朝は出かける前、寝癖を直すときに。夜は入浴前にブラシを髪に通す。

日本では、髪を梳かす行為には、髪に溜まった不浄や邪気を払い落とすという意味があると聞いたことがある。夜に髪を梳かすときは、その日の疲れや嫌な気分を洗い流すようなイメージを持つようになった。以前は忘れがちだったブラッシングが、髪だけでなく気持ちを切り替えるための動作へと変わった。

念入りに梳かした髪に触れると、心なしか艶が出ているような気もした。

今も、夜の入浴前にはこのブラシで髪を梳かす。毛先が根元まで届く感覚を確かめながら、その日の疲れや嫌な気分も一緒に洗い流すような気持ちで。

INFORMATION
工芸名
江戸刷子
工芸タイプ
その他
産地
東京都日本橋大伝馬町
素材
特級黒豚毛
作り手・工房
江戸屋
紹介商品
ヘアーブラシ 6行植え S型 特級黒豚毛
Tags
バス&ビューティ
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