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古川紙工のそえぶみ箋、七行に言葉を選ぶ
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文具
紙

古川紙工のそえぶみ箋、七行に言葉を選ぶ

Luna Saito
|
2026-10-01
読了時間5分

七行にどんな言葉を添えるか

家族や友人との日常的な連絡は、ほとんどチャットで済ませている。誰かに手紙を書く機会は、ここ数年ほとんどなかった。

岐阜県美濃市に「うだつの上がる町並み」と呼ばれる古い町がある。

旅で訪れて町を散策していたとき、「紙遊」と書かれた暖簾のある店を見つけた。中に入ると、メモ帳やレターセット、マスキングテープなど、和紙でできた紙雑貨がところ狭しと並んでいた。そのなかからミモザ柄の一筆箋とそえぶみ箋をいくつか、そして和柄の御朱印帳を買った。

そえぶみ箋を手に取ったのは、「世界一短い手紙で気持ちを伝える」というキャッチコピーと七行しかない小さな便箋に惹かれたからだった。

家に帰ってすぐ、友人への贈り物に添える短い手紙を書くことにした。七行なら簡単に書けるだろうと思っていた。ところが実際に紙を前にすると、短いからこそ何を伝えるべきか頭を悩ませた。限られた余白に収まるのは一文か二文だけ。頭の中に浮かぶ思い出や感情のなかから、本当に伝えたい言葉を一つずつ拾い上げていく作業は、思っていたよりずっと頭を使うことだった。

そうやって言葉を選んでいるうちに、気づけば自分がその相手をどれだけ大切に思っているかを改めて確かめているような感覚があった。

オンラインでのやり取りより、紙に書いたほうが温かみが伝わるように感じた。相手にも、喜んでもらえた。それ以来、大切なことは自分の手で書いて伝えたいと思うようになった。

そえぶみ箋

紙の新しいカタチを発信する古川紙工

古川紙工は、岐阜県美濃市に拠点を置く紙製品のメーカー。1835年に始まった同社は創業以来180年以上もの間、美濃和紙を扱う商いを続けてきた。現在は紙製品の企画から製造、販売までを手がけ、美濃和紙を使った便箋や封筒、一筆箋などを展開している。

世の中がデジタルに移行していくなか、古川紙工は人と人との温かいつながりを支える「暮らしの紙モノ」をつくりたいとの想いで、紙の新しいカタチを発信するようになった。書くことの楽しさ、季節を感じる豊かさ、気持ちを伝えることの大切さを紙だからこそ実感できるものとして捉え、現代の暮らしに合った紙の可能性を追求している。

私がそえぶみ箋に出会ったのも、同社が美濃市で営む直営店「紙遊」でのことだった。「そえぶみ箋」は2007年に古川紙工が発売した、美濃和紙を使った一枚に七行ある便箋だ。ちょっとした手紙だけでなく、メモとしても使える。

七行という余白は、誰にとっても書きやすいとは限らないだろう。少なくとも私にとっては、短さが書く負担を減らしたのではなく、何を省き、何を残すかを選んで文章を紡いでいくという別の難しさがあった。

七行に収めるために何を省き、何を残すかを考える時間は、私にとって相手に本当に伝えたいことを確かめる時間にもなった。言葉の重みを意識しないまますぐに送れる今だからこそ、紙を前にして少し立ち止まり、伝えたい一文を選ぶことにも意味があるのではないだろうか。

ミモザ柄の一筆箋

伝えたい言葉をつむぐ手段

そえぶみ箋を光に透かすと紙の繊維がよく見える。表面には少しざらつきがあるが、それは決して不快な手触りではなく、むしろそこに温かみを感じた。鼻を近づけると、かすかに植物のような香りがする。

今も、普段の連絡はチャットが中心だ。ただ、祝い事や感謝など、特別に伝えたいことがあるときだけ紙を選ぶ。特別な便箋でなくても、手元に紙があれば、誰か一人に伝えたい一文か二文だけを書いてみる。書いたあと、自分が何を残し、何を省いたのかを見てみてもいい。

今度は美濃和紙につづってみる。手元にある紙に書くのとは違い、自分で選んだレターセットには、その手触りや香りまで含めて気持ちを託せるような気がする。大切な言葉が伝えたい人の元へ届く瞬間を思い浮かべると、ほんの少しだけ、心が温かくなる。

INFORMATION
工芸名
美濃和紙
工芸タイプ
紙
産地
岐阜県美濃市
素材
楮
作り手・工房
古川紙工
紹介商品
そえぶみ箋、一筆箋
Tags
文具
紙
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