

朝、コーヒー豆を挽いて淹れる。豆の香り。ベランダに出ると、朝の澄んだ空気のなかで鳥がさえずる声に耳を傾ける。微風が頬を撫でていく。
マグを両手で包む。指先に、ややざらっとした表面が触れる。ざらつきはあるけれど、触れている面は限りなく滑らかでやさしい。
それから重さ。しっかりと存在を感じるくらいの重さはあるけれど、自然と手になじむ軽やかさがある。
陶磁器の持つ無機質さというよりも、自然の大地の温かみを感じる。石を思わせる、冷たくも温かみがある温度感。心が温まり、今日これから始まる一日が穏やかで実りのあるものになると、励まされているような気持ちになった。
見た目に惹かれ、手で知った
朝一番のコーヒータイムに、在宅ワーク中の飲み物に、このHASAMI PORCELAINのカップを使っている。
使う前に期待していたのは、現代の日常になじむことと、どんな食卓でも使いやすいこと。惹かれたのも、まずは形だ。シンプルでモダン、スタイリッシュなシェイプ。そこに石を思わせる素材感と素朴さがあり、自然の温かみを感じさせる見た目に親しみを覚えた。
実際に使ってみてわかったのは、器の素材の温かさと重量感だった。見た目から受け取っていた温かみは、手の中ではざらつきと重さを伴って届く。石を思わせる素材感のなかに、いつも自然由来の温もりを感じる。
リモートワーク中など、集中したいときにもこのカップを手に取る。シンプルな見た目が心を落ち着けてくれるからだ。
食卓をシンプルで落ち着いた空間にしたいときは、HASAMI PORCELAINのプレートを出す。パスタ、カレーやシチュー。ワンプレートでまとめたい料理を盛ると、深い土色は食材の色みを邪魔しない。
ロサンゼルスで出会ったHASAMI PORCELAIN
出会いは、ロサンゼルスに住んでいたときだった。
日本の雑貨を扱うライフスタイルショップで、シンプルで使い勝手のよさそうな食器を見つけた。手に取って裏返すと、カップの底に「HASAMI PORCELAIN JAPAN」と印字されている。長崎県の波佐見焼が、ロサンゼルスの店に並んでいた。
プレートもボウルもカップも、縦に重ねて置かれていた。「重ねられる器」を意識したデザインにおもしろみを感じた。調べてみると、米国で生まれたブランドだという。波佐見の器が米国で生まれたブランドとして展開されていることに驚き、興味を持った。

波佐見焼は、長崎県で生産される陶磁器だ。HASAMI PORCELAINは2011年に波佐見焼のテーブルウェアブランドとして米国で誕生し、日本では2013年に販売が始まった。波佐見町の西海陶器のグループブランドのひとつであり、ロサンゼルスのライフスタイルショップのオーナー兼デザイナーの篠本拓宏氏がディレクションを担う。
HASAMI PORCELAINの器は共通の直径モジュールをもとに設計されている。トレードマークであるOriginal Collectionの器の形を構成するのは、直線と正円のみ。この繰り返される一定のフォルムによって、縁が同じサイズの器同士をスタッキングできるデザインになっている。
釉薬をかけないNatural、顔料で色をつけたBlack、釉薬で仕上げたGloss Grayと、仕上がりによって手や口が触れたときの表面の艶や触り心地が異なる。

朝のコーヒーを飲むときも、在宅ワーク中に飲み物を用意するときも、このマグを使っている。食卓では、ワンプレートとして料理を盛る。
手で感じるマグのざらつきや重さと、料理を盛ったときに目に入るプレートの土色。使う場面によって、同じHASAMI PORCELAINでも目を向けるところが違う。
いつも使っているカップでも、持ったときに指が触れているのはどの面だろう。縁か、胴か、取っ手か。手にかかる重さは、どのくらいだろうか。
ベランダでマグを両手で包む。指先にはややざらっとした表面が触れ、手のひらにはずしりとした重さがある。その重さごと、自然と手になじむ。