

朝、出かける支度をするとき、服や髪型、その日の気分を考えながらアクセサリーを選ぶ。その選択肢の中に、岐阜県美濃市のカミノシゴトで買った美濃和紙のピアスとヘアゴムがある。
二つを買ったのは2022年、美濃市を訪れたとき。美濃市には、江戸時代の面影を残す「うだつの上がる町並み」と呼ばれる古い町がある。この町を散策している途中で木造の店を見つけて立ち寄った。そこは、美濃和紙を使ったインテリア雑貨やアクセサリーを製造・販売する「カミノシゴト」という専門店だった。
美濃和紙には、長い歴史を持つ日本らしい素材という印象を持っていた。一方で、現代の暮らしになじむような取り入れ方のイメージをあまり持っていなかったのも事実だ。
店に入ってすぐの棚に並んでいたのは、手漉き和紙で作られたイヤリングやピアス、ヘアピンなどのアクセサリー。鶴や紙風船などの折り紙で折ったようなデザインのものから、お花やモダンなデザインのものなど、さまざまなアクセサリーが並んでいた。
そのなかで、コロッとしたモダンな形のピアスと伝統的な四海波柄のヘアゴムに惹かれて、この二つを購入した。
仕事に行く日、休日に出かけるとき、友人に会う日。服装やその日の気分に合わせて、ピアスやヘアゴムを使う。
実際に身につけてみると、普段は金属製のものを付けることが多いからか、思ったよりも軽い。そして何より紙ならではの温かみを感じられた。表面に触れると、和紙らしいざらつきがあることが分かる。けれど、そのざらざら感は不快なものではなく、どことなく素材の温もりが伝わってくるのだ。
朝の支度をし、その日一日、そのアクセサリーを付けている自分を想像しながら手に取ると、なんとなくワクワクして温かい気持ちになる。私はそこに、和紙の温もりを感じるようになった。

カミノシゴトは、岐阜県美濃市相生町にある美濃手すき和紙の専門店。美濃和紙の真髄である手すき和紙を広めるため、2003年に若手職人たちのための展示会の拠点としてオープンした。
その後、2007年頃から職人みずから運営するアンテナショップに、2012年からは家田紙工株式会社が運営主体となり、美濃手すき和紙の職人とともに和紙製品づくりと販売に励んでいる。和紙の魅力と技術を次世代につなげることを目的に、身近な素材として親しんでもらえるようなインテリアや雑貨にリデザインして提供する。それが「カミノシゴト」だ。
私が選んだピアスとヘアゴムも、和紙でありながらそのデザインや色使いにモダンさがあり、どちらも普段のファッションへの合わせやすさがある。

美濃和紙のアクセサリーを使うことで、暮らし全体が大きく変わったわけではない。
変わったのは、和紙との距離だった。
以前は、和紙を日本の伝統文化を感じる特別なものとして見ていた。今は、服装や気分に合わせて選ぶ日常の素材の一つになっている。和紙らしさを残したまま、日常に取り入れられる身近なものとして見るようになった。
自分が持っているアクセサリーを一つ手に取り、なぜそれを選ぶのかを考える。色やデザインだけでなく、素材の印象から眺め直すと、いつもの選択に別の理由が見つかることもある。
出かける朝、服や気分を考えて、どのアクセサリーにするか迷う。その選択肢の中に、いまは美濃和紙がある。