

「ぬくぬく」という表現が、これほどぴたりと合うものはない。表地と裏地の間に中わたを入れた綿入れはんてんを羽織るたび、そう思う。
子どもの頃、冬になると赤いはんてんを着てこたつに入っていた。大人になってから改めて袖を通したのは、15年以上ぶりだった。昔ながらの形と織物の柄に、懐かしさを覚えた。
愛用しているのは、宮田織物の「60双糸 縞袢天」。はんてんの形は体の線より大きく見えるため、隙間から冷気が入ってきそうだと思っていたが、実際に羽織ると予想していたより温かい。手に取ると軽く、部屋着の上から着ても重さはほとんど気にならない。それでも肩から包まれる温かみは、布団をかぶっているときの感覚を思い起こさせる。
冬の朝は、布団から出たらすぐにこのはんてんを羽織る。夜も、仕事から帰って手を洗い、部屋着に着替えてから袖を通す。ときには膝掛けのように使うこともある。冬になるとクローゼットの奥から取り出し、毎日使う一枚だ。
以前は冬の寒い朝に布団から出るのが億劫だった。今は、出てすぐはんてんを羽織れば、布団の中にいるような温かみがその先にも続く。布団から出ることを、以前ほどためらわなくなった。

このはんてんをつくる宮田織物は1913年、福岡県筑後市で久留米絣の機織りから始まった。1965年に綿入れはんてんの製造を開始し、現在は糸選び、生地の企画、織り、縫製までを自社で行っている。
「60双糸」の60は糸の番手を、双糸は2本の糸を撚り合わせたものを指す。愛用するはんてんの表地と裏地は綿100%、中わたは綿80%・ポリエステル20%。さらりとした表地と軽やかな着心地が、この一枚の特徴だ。
綿入れの工程では、二人一組で表地と裏地の間へ中わたを入れ、その偏りを防ぐため要所を手作業で縫い留める。生地づくりから仕立てまでが、筑後市の工場でつながっている。
2025年12月19日、筑後市、久留米市、三潴郡大木町でつくられる「久留米綿入はんてん」は福岡県知事指定特産民工芸品に指定された。宮田織物は、その製造を担う6事業者の一つだ。
今、このはんてんを着るのは朝だけではない。
家でちょっとした作業をするときも、在宅で仕事をするときも羽織っている。着たまま食事の支度や料理をし、お風呂から上がったあとは湯冷めしないようにすぐ袖を通す。そのままソファでくつろぎ、はんてんに包まれたまま眠ってしまうこともある。
着心地がいいので、家にいる間は脱ぐきっかけをあまり意識しない。何か特別なことをするための一枚ではなく、作業をするときも食事をするときも休むときも、いつの間にかそこにあるものになった。
子どもの頃から知っている昔ながらのはんてんが、今の暮らしにもこうしてなじんでいる。
冬になると、私はクローゼットの奥からこのはんてんを取り出す。懐かしいものを眺めるためではなく、またいつものように袖を通すために。