

友人が遊びに来る時、KAGOはワインボトルを受け止めるホルダーになる。四角い網目を指で少しずつ曲げていくと、平らだった錫がゆるやかに立ち上がり、ピキピキと小さな音を立てる。曲げる時に結晶構造が変化して生じる「錫鳴き」だ。
富山を訪れた際、高岡銅器という鋳物の伝統工芸を知った。その作り手の一つである能作の店で、このKAGOを買った。以来、私の部屋を飾るお気に入りのインテリアの一つとなった。
友人を迎える時はワインホルダーに。本棚では、気に入っている写真集を支える台に。ドライフラワーを飾りたい時は、花を受け止める形に。フルーツかごになるときもある。正解はない。つど手を動かして、必要な形に整える。
錫100%でできているKAGOは、少し力を加えるだけで曲げられる。網目模様は迷路のようで、大人っぽさの中にどこか繊細さが感じられる。錫色の鈍い輝きにも、金属らしい冷たさより少し温かみがある。
形を変えるたび、つい耳を澄ませてしまう。あのピキピキという音を聞くと、大人の工作をしているような気分になる。頭の中にあるイメージを、道具を使わず手だけで形にしていく。それが単純に楽しい。
用途に合わせて形を変えるたびに音を確かめる癖が、いつの間にか身についていた。

能作は、1916年に富山県高岡市で創業した鋳物メーカーだ。創業当時は仏具や茶道具、花器などを手がけていたが、2003年からは錫100%の製品開発をはじめ、現在はライフスタイルの変化とともにモダンなデザインの鋳物製品の制作にも取り組んでいる。
「KAGO」シリーズは、そうしてできた製品の一つだ。一般的な錫製品では硬度を持たせるためにほかの金属を加えることがあるが、能作のKAGOは錫100%。その柔らかさを生かし、縦横に引いたり曲げたりすることで、平面からかご状の形へ変えられる。
四角や楕円、花などさまざまな形の平たいプレートの網目を一つひとつ動かすことで、果物を置くかごにも、本やワインボトル、スマホなどを支える形にもなる。

「自分らしい部屋」というと、統一された家具や決まったスタイルを思い浮かべやすい。でも、すでに持っている一つの物に、そのときどきで必要な形を与えることも、部屋との関わり方の一つなのかもしれない。
ワインを受け止める形にするか、本を支える形にするか、花を飾る形にするか。決めるのはいつも自分。
KAGOの形を変える行為が、いつの間にか「自分にとって心地よい部屋とは何か」を考える時間になっていた。一度つくった形から、次はどんな形に変えられるだろうと考える。
KAGOを曲げるたび、あの小さな音に耳を澄ませる。次の形を思い描く時間に、今もワクワクしている。