

出かける前、その日の気分や服装を考えながら、このピアスを手に取る。指先で波の大きさや位置、角度を変えてから身につける。
完成した形を選ぶだけでなく、その日ごとに自分の指先で形に関わりながら身につけることもできるのだと、このピアスを使うようになって気づいた。
手に取ると、表面はざらりとしている。光を受けると、鈍く優しく、温かみを感じるよう落ち着いた輝きを放つ。大ぶりな分、重みがあり存在感もある。
身につけるたびにワクワクするような、心が弾む楽しい気持ちになる。
遊び心を出したい時、ユニークさとシックさの両方を求める時に、このピアスを選ぶ。髪を上げれば大ぶりな形がよく目立つ。髪を下ろして耳にかけた時にも、装いのアクセントになる。
このピアスを使い始めてから、錫という素材そのものにも目を向けるようになった。
このピアスに出会ったのは、富山県高岡市の金屋町を訪れたとき。金屋町は鋳物師が集まって形成された町並みが残り、石畳の通りには格子が設けられた町家が並ぶ。
その通りで、立派な格子戸のある大寺幸八郎商店を見つけた。1860年の創業以来、高岡銅器のものづくりを商いとしてきた大寺幸八郎商店は、現在は自社の鋳物製品だけでなく、地元作家や若手デザイナーによるさまざまな工芸品や雑貨を店先で販売している。
店内に並ぶ工芸品の中から私が選んだのが、波を連想させる大ぶりのピアスだった。大寺幸八郎商店のオリジナルブランド「kohachiro」。デザイナーの大寺桂さんが2018年に立ち上げたアクセサリーブランドだ。
波うつ錫のピアスには純錫が使用されており、柔らかい錫を曲げて波打つ形がデザインされている。シンプルだが、存在感がある。

錫特有の柔らかさから、私はこのピアスを付ける前に、波の位置や角度を指先で微妙に変えながら使う。金屋町の店で出会った一つの形が、今ではその日の気分に合わせて形に関わりながら身につけるものになった。
装うということは、完成した形を選ぶことだけではないのかもしれない。自分の指先が加わることで、身につける物との距離が変わることもあるのだと、このピアスを通して思うようになった。
手持ちのアクセサリーを一つ身につけて、見え方や服との重なりを見比べてみる。
次にこのピアスを身につける時も、その日の気分に合わせて、波の位置や角度を指先で決める。