

夜、寝る前。部屋の照明を消し、寝室のベッド脇にあるサイドテーブルの小さな提灯を灯す。
和紙を通して部屋に広がる明かりは柔らかい。小さな光と、ころりと丸みのある形を見ていると、なんだか心がほどけて温かい気持ちになってくる。体に溜まった疲れが溶けてなくなるような気がした。
この提灯に出会ったのは、福岡県八女市にある「ちょうちん堂」という八女提灯を扱う店舗だった。店内には丸型のもの、卵型、ツリー型、四角いもの。無地や花柄、モダンな柄のもの。手のひらより一回りほど大きな、小ぶりの提灯が並んでいた。
その中で目に留まったのが、ひょうたんのような丸みを持つ提灯だった。
寝る前のリラックスしたひととき、この提灯を灯す。仕事を終えた後や帰宅後、夕暮れどきに灯す。明かりをつけると、いつまでも見つめてしまう。
昼間は明かりが消えた提灯の表面に指で触れ、素材の手触りを確かめる。顔を近づけると、表面に浮かぶ和紙の繊維がよく見える。
普段は時間に追われて、立ち止まることも一息つくことも忘れがちだ。
けれど、この提灯を灯すようになってから、何をするでもなく、ぼんやりと光を見つめる時間ができた。

八女提灯は、福岡県八女市で生産される提灯。1816年頃に始まったとされ、大正時代以降はお盆の時期にご先祖様を迎え入れ、送り出すために仏壇に飾る盆提灯として広く知られるようになった。
その技と伝統を受け継ぎ、今も八女提灯をつくり続けているのがシラキ工芸。シラキ工芸では、若い職人たちが毎年のお盆に向けて盆提灯をつくっている傍ら、現代のライフスタイルに寄り添えるような普段使いできる提灯づくりも手がけている。
そんなシラキ工芸の直営店が、八女市に構えられた「ちょうちん堂」だ。ちょうちん堂では、現代の暮らしで普段使いできるようにシラキ工芸が生み出した、コンパクトでモダンなデザインの提灯「cocolan(ココラン)」が販売されている。

ちょうちん堂で並んでいたいくつもの形から選んだ一つが、今は私の寝室で寝る前の穏やかなひとときを照らす道具になっている。
小さな光をただ眺める時間が、普段の夜にもあっていい。柔らかい明かりに包まれて、一日のできごとを振り返ってみてもいい。静かに音楽に耳を傾けたり、お香を焚いたりしてもいい。
そんな何でもない時間が心を整えるための大切な時間だということに、この提灯と暮らすようになって気づいた。
小さな提灯を一つだけ灯し、数分間、何もせずに光を眺める。何も変わらなくていい。ただ、自分という存在が、たしかにそこにあるということを確かめる。